【発達障害の症状改善】IgG遅発型アレルギー編

身近な食品が心身の負担に!?その不調、隠れたアレルギーが原因かもしれません 「アレルギー」という言葉を聞いたことがありますか?花粉症やぜんそく、アトピー性皮膚炎などは有名なアレルギー疾患ですが、現代では食べ物によってアレルギー症状が出る人も珍しくありません。食べ物によるアレルギーというと、食べた後すぐに蕁麻疹が出たり、呼吸が苦しくなったりする「即時型アレルギー」と言われるものが一般的です。しかし実は、食べてから数時間、場合によっては何日も経ってから身体に影響を与えるアレルギーが存在することをご存知でしょうか?このアレルギーは「遅発型アレルギー」と呼ばれ、精神的・身体的に様々な症状をもたらすことが分かっています。今回は、この遅発型アレルギーと発達障害の症状について、Cくんの例を見ながらお話ししたいと思います。 1.落ち着きのなさと、ある食品が関わっていたCくんの例 保育園の運動会ではみんなが踊っている中1人だけ走ってしまうなど、集団行動に難しさを抱えていたCくん。周りから多動があるのではないかとの指摘を受け、マリヤ・クリニックで治療を開始しました。当時の症状としては、落ち着きのなさのほか、異常な食欲・空腹時の興奮・食後の強い眠気など、血糖値の不安定さを示す症状も見られました。検査結果に基づいて、乳や小麦など負担となり得る食品の除去を筆頭に、腸内環境の改善、血糖値を安定させる食生活のアドバイス、サプリメントの摂取などで治療を始めました。すると、徐々に落ち着きが見られるようになり、異常な食欲も落ちついてゆき、読書やパズルなども集中して取り組めるようになっていきました。 しかしC君の場合、体調が安定した時期に小麦製品の摂取を試みたところ、感情の波が激しくなるなど周囲とのトラブルが増え、再度小麦の除去が必要になった、という経緯があります。カゼイン/グルテン編の動画で、乳と小麦のペプチドが発達障害の症状にも関わるというお話をしましたが、Cくんの場合、ペプチドの検査※では乳ペプチドであるカソモルフィンの数値が高く、小麦ペプチドであるグリアドルフィンの数値は正常範囲でした。しかし、遅発型アレルギーの検査では乳よりも小麦の数値が高く、実際に乳よりも小麦を摂った時の方が体調に明らかな影響を及ぼしていたのです。しかし、その後も丁寧に治療に取り組んでいった結果、今では乳や小麦を含めてみんなと同じ給食が食べられるようになり、毎日元気に学校に通っています。 (※ペプチド検査は現在検査会社の都合により提供中止となっています) 2.肌が弱い、お腹が弱い、メンタルが弱い・・・食べてすぐには分からない、遅れて影響を与えるアレルギー Cくんはもともと湿疹や喘息、特定の食品で口の周りが赤くなるなどのアレルギー体質があり、定期的に血液検査を行っていました。その時に調べていたのは一般的な即時型アレルギーの検査です。しかし、その検査では乳や小麦には明らかな反応は出ていませんでした。では、即時型アレルギーと遅発型アレルギーにはどのような違いがあるのでしょうか? これらの検査で調べるIgE、IgGというのは「抗体」と呼ばれるものです。 抗体は、身体の中へ侵入してきた病原菌などの異物(抗原といいます)に対して、リンパ球という免疫細胞が作りだす物質です。例えると、悪い物をやっつける武器のようなものですね。抗体は免疫グロブリンと呼ばれ、構造の違いによってIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5つに分類されます。 このうち、すぐに症状が出る即時型アレルギーはIgE抗体との関わりが深く、その一方で、遅発型アレルギーに関わると考えられているのがIgG抗体です。IgGは血液中に最も多く含まれる免疫グロブリンで、感染症に対する免疫システムの最初の攻撃の後、長期間の抵抗力をつける役目を果たしています。しかし、食品でこの抗体の数値が高かった場合、食後しばらく経過してからさまざまな症状が出る原因となる可能性があるのです。例えば、食後しばらくすると体調を崩す、慢性の湿疹や皮膚のかさつき、うつ症状、慢性的な疲労、関節炎・大腸炎、下痢・便秘など、慢性疾患や不定愁訴に関わる場合があると考えられています。 IgG遅発型アレルギーの厄介なところは、食べてすぐではなく、しばらく経ってから体調に影響を与えるという点です。日常的に食べているものだと慢性的な症状として現れることも多く、食後すぐに症状が出る即時型アレルギーと違って、原因が分かりにくいため、検査しなければ分からないアレルギーとも言えます。IgG遅発型アレルギーの検査は、日本国内では行われていません。アメリカでは近年検査できるところが増えていますが、検査会社によって数値や評価が異なります。 マリヤ・クリニックで長年採用しているIgG遅発型アレルギーの検査も、少量の血液を採取し、アメリカの検査機関に送るものです。一度の検査で、乳製品、豆類、果物、穀類、魚介類、肉類・卵、ナッツ、野菜、ハーブやスパイスなどの190種類の食品と、腸内環境悪化と関わりの深いカンジダ菌・酵母菌の2種類を調べます。 検査結果で高い反応が見られた食品を除去することで、他の治療で改善しなかった症状が改善されることがあります。しかし、それには注意も必要です。 3.自己流の除去は要注意! 単純に、高い反応が出た食品を除去すれば良いのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、たくさんの項目で高い反応が出てしまった場合、全てを除去することは容易なことではありません。何より、除去する食品が多いほど、栄養バランスのとれた食事にすることが難しくなります。除去ばかりを優先すると、栄養不足に陥る危険性があるからです。身体に負担となるものを除去するだけでなく、身体に必要なものをしっかり摂ることはとても大切なことです。ある食品を除去することで不足しやすくなる栄養素を、他の食品やサプリメントを有効に使って、いかに補うことができるかは、成長期の子供にとっては特に重要です。 また、マリヤ・クリニックでは、高い反応が出ていても、全ての食品で完全な除去が必要とは考えません。患者さんの症状や栄養状態、食事の状況などは1人1人違うため、何を優先的に除去するべきか、どの程度の除去が必要なのか、どの位の期間除去すれば良いのか・・・等、その方に最も適した方法を、経過を見ながら一緒に考えていきます。そのため、自己流の除去や管理では対策が難しいアレルギーなのです。 そして、高い反応が出た食品を除去するだけではなく、根本の部分からの改善を目指すためには、実は腸内環境を整えることがとても大切です。 4.免疫って何?アレルギーと腸内環境の関わり アレルギーと腸内環境って関係あるの?と思われる方もいるかもしれませんが、実はとても深い関係があります。アレルギーは過剰な免疫反応によって起こるものであり、免疫は腸内環境に深く関わっているからです。 そもそも「免疫」とは、一体どういうものなのでしょうか?私たちの周りには肉眼では見ることができないほど小さく、病気のもととなる病原体が無数に存在しています。この病原体から身体を守っているのが「免疫」です。免疫という言葉は「疫病(病気)から免れる」とうことからきています。私たちの身体は常に様々な病原体にさらされていることから、病原体が体内に侵入した時のために、それらを攻撃・殺傷・無毒化・排除する防御システム、つまり免疫を備えているのです。 免疫の主役は白血球と呼ばれる細胞です。白血球は様々な免疫細胞で構成されていますが、その一つに、リンパ球と呼ばれるものがあります。リンパ球にもいくつか種類があり、身体に入ってきた異物を攻撃するよう指令を出すものや、自ら攻撃する働きを持つもの、攻撃をするための武器(抗体)を作るものなどがあります。このうち、攻撃の指令を出すリンパ球はヘルパーT細胞と呼ばれ、代表的なものにTh1細胞とTh2細胞があります。Th1細胞は病原菌やウイルスなどを担当し、Th2細胞は花粉やダニ・ホコリなどのアレルゲンを担当しています。Th1細胞とTh2細胞は、お互いにけん制しあうことでどちらかに偏った免疫反応がおきないように調節しあっています。このバランスが取れている場合には免疫系は正常ですが、Th1細胞とTh2細胞のバランスが崩れ、Th2細胞が働きすぎるとアレルギーを発症しやすくなります。 私たちは、産まれた時はTh2細胞の働きが優位な状態で産まれてきます。成長に伴い、ウイルスや細菌が体内に侵入し、Th1細胞の働きがだんだんと発達することで、Th1細胞とTh2細胞のバランスが取れるようになっていくのです。小さいころにアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの症状を持っていた子が、成長するにつれて自然とアレルギー症状が出なくなっていく場合は、このTh1細胞とTh2細胞のバランスが整ってきたからと考えることができます。 しかし、昔と比べて現代は花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息、食物アレルギーなどのアレルギー疾患を持つ人が増えています。その理由の一つに、衛生面があげられます。昔と比べて現代は衛生面がとても発達していますが、行き過ぎた除菌・抗菌対策による清潔すぎる環境は、細菌やウイルスに感染する機会を減らし、Th1細胞の出番を減らしてしまいます。その一方で、大気汚染や食生活の多様化によってTh2細胞の出番は増えています。このように、Th2細胞が働きすぎる環境になっていることも、アレルギー疾患が増えた一因と考えられるのです。 そこで重要となるのが、腸内細菌のバランスです。善玉菌である乳酸菌にはTh1細胞の働きを活発にし、アレルギー反応を司るTh2細胞の働きを抑える働きがあります。アレルギー患者の腸内では善玉菌が少なく悪玉菌が多い傾向が見られることから、腸内環境を善玉菌が優勢になるようにし、Th1細胞とTh2細胞のバランスを整えることで、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を改善する治療方法が注目されています。 5.腸管免疫と、腸内環境を整えることの重要性 腸は身体を守る免疫系の中でも最前線で働いている器官です。なぜなら、腸は食べ物と一緒にさまざまな菌や有害物質も入ってくる場所だからです。病原菌が腸管からほかの部分に侵入するのを防ぐために、腸には免疫細胞の大部分、実に全身の60~70%が集中しています。また、全身の粘膜で、病原菌やウイルスなどの侵入者と直接戦うために分泌されるIgA抗体も、その多くが腸に存在しています。このように、腸で働く免疫機能のことを「腸管免疫」といいます。腸管免疫は侵入してくるものの善悪を見極め、悪い侵入者のみを除くという極めて難しいことを行っています。そして、この重要な働きに、腸内細菌が大きな影響を与えていることが明らかとなってきました。 これまでの動画で、腸に住む菌のバランスは、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7、つまり悪玉菌よりも善玉菌の方が多い環境が理想的であることをお伝えしました。この理想的な環境が、腸管免疫を維持するためにとても大切なのです。しかし、この菌のバランスが崩れて、善玉菌よりも悪玉菌の方が優位になってしまうと、カンジダ菌などのカビの仲間が腸内で増えてしまい、腸の壁を傷つけてリーキーガット(腸漏れ)を引き起こし、未消化の食べ物や有害な菌などが腸のバリアを越えて血液中に侵入しやすくなってしまいます。すると、感染症にかかりやすくなったり、アレルギーの一因となったりすることがあります。つまり、腸内環境が悪くなると、腸管免疫の低下を招いてしまうのです。 食品は本来、身体にとって栄養となる「安全なもの」のはずなのですが、未消化の状態で吸収されると穏やかではありますが免疫反応を引き起こし、極端な場合にはアレルギーなどを引き起こすこともあります。カゼイン/グルテン編の動画でお伝えした乳や小麦のペプチドと同様に、IgG抗体による遅発型アレルギーも、未消化の食べ物(特に未消化のタンパク質)が、腸内環境の悪化によって傷ついた腸壁から吸収されることで起こると考えられます。そのため、タンパク質の多い食品や普段よく食べているもので高い反応が出ることも珍しくありません。では、IgG遅発型アレルギーで高い反応が出た場合、どのような対策が必要となるのでしょうか?それには、大切な3つのポイントがあります。 1つ目は、高い反応が出た食品を除去することで、身体への負担を減らすことです。こちらについては、先ほどお話ししたように、1人1人個別の対応が必要となります。…

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