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【発達障害治療】腸内環境編

お腹は元気?腸内環境改善が身体全体の改善になる!


みなさんこんにちは。マリヤ・クリニックです。このページでは、発達障害に特徴的な症状に対して、分子整合栄養医学的アプローチで改善を目指す当院の、実際に改善した例や治療の内容についてご紹介しています。 今回は、発達障害治療において最も重要な事といっても過言ではない腸内環境のことをお伝えします。腸内環境が良くなると日常の様々な困りごとが減っていく例が多いです。その理由は消化・吸収、菌や毒素をバリアする機能の改善だけではなく、腸は脳と連動しているため(脳腸相関)腸の改善は脳の改善になるからです。

発達障害の症状と腸内環境の関係

発達障害の症状と腸内環境って関係あるの?と思われる方もいるかもしれません。

実は、腸内環境が悪いと、お腹の調子や便の状態が悪くなるだけでなく、精神・神経に影響を与えたり、脳や身体がエネルギー不足になりやすかったりと、身体全体に大きな影響を与えてしまうのです。 マリヤ・クリニックに治療に来る発達障害のお子さんには、便秘や下痢・食欲不振・お腹が張りやすい・ガスが多いなど、お腹のトラブルを抱えている子がとても多いです。しかしそれは逆に、腸内環境を良くすることで身体全体の状態を改善できる可能性があるとも言えます。

実際に、腸内環境改善を取り入れた治療によって発達障害の症状が改善したBくんの例を紹介します。

初めてマリヤ・クリニックを受診した時、緊張と不安が強く大声で泣き、診察どころではなかったBくん。 当時の症状は、言葉の遅れ、歩くのが遅い、怒りっぽい、感覚過敏などがあり、赤ちゃんの頃から慢性的な便秘がありました。検査結果に基づいて、腸内環境の改善を筆頭に、負担となり得る食品の除去や食生活のアドバイス、サプリメントの摂取などで治療を始めました。

すると、少しずつ排便がスムーズになっていき、それに呼応するかのように、寝つきが良くなったり、怒りっぽさが落ち着いてゆくなどの変化が見られました。その後も治療を続けることで、言葉の発達や運動面の成長、感覚過敏の減少などの改善が見られ、治療を始めて3年が経つ頃には幼稚園に問題なく通えるようになったのです。

Bくんのように、腸内環境の改善が神経的・身体的な改善につながることはとても多くあります。 そこで今回は、腸内環境や、腸内環境を改善するためのポイントについてお伝えしていきたいと思います。

腸内環境について

ヒトの腸内には様々な菌が住んでおり、大人になるとその数は100兆個以上にもなります。この多種多様な菌が密集している様子が、まるでお花畑(フローラ)が広がっているように見えることから、「腸内フローラ」とも呼ばれます。この膨大な数の腸内細菌は、私たちの健康状態にも大きな影響を与えています。腸内細菌は、ヒトにとって有益かどうかで「善玉菌」と「悪玉菌」に分けられ、それ以外に、多い方の味方につく「日和見菌」があります。これらの菌のバランスは、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7というバランスが理想です。日和見菌が全体の7割と最も多いのですが、残り3割のうち善玉菌と悪玉菌のどちらが多いかということが非常に重要なのです。つまり、善玉菌の方が悪玉菌より多ければ良い腸内環境になり、逆に悪玉菌の方が善玉菌より多くなると、悪い働きをする菌が大部分を占める悪い腸内環境、となってしまいます。

ヒトの腸内では、加齢とともに善玉菌が減少し悪玉菌が増加する傾向が見られます。母親の胎内は無菌状態ですから、産まれる前の赤ちゃんの腸内にはまだ菌は存在しません。出産時、産道を通る時に口や鼻を通して初めて菌が赤ちゃんの体内に入ります。生まれたばかりの赤ちゃんの腸内は、善玉菌が多く悪玉菌が少ないので、便は臭くありません。その後、離乳食が始まると様々な食品と一緒に菌も腸内に入り、腸全体に広がって、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスが形成されていくのです。

しかし、現代社会には、腸内環境を悪化させる様々な要因があります。例えば、肉類・脂肪・甘い物の多い食生活、ストレスや睡眠不足などの不規則な生活リズム、自律神経のバランスの乱れ、抗生物質の多用など、身近な理由で善玉菌が減り、悪玉菌やカンジダ菌などのカビの仲間(真菌)が増えることにつながってしまうのです。

では、悪玉菌や真菌が増えることで、発達障害の症状を含め、身体にどんな影響を与えてしまうのでしょうか?

腸内環境が悪いと全身に影響を与えます

悪玉菌でよく見られるものとして、クロストリジウムや病原性大腸菌などの細菌があります。その他に、免疫力が低下した場合などはカンジダやサッカロミセスなどの真菌や酵母菌も繁殖してしまいます。これらの菌が増えることで、腸内環境が悪くなり、身体に様々な悪影響を及ぼしてしまうのです。

それでは、当院で発達障害の治療においても注目する代表的な悪玉菌と真菌を見てみましょう。

クロストリジウム

腸内細菌であるクロストリジウム属の中には、神経伝達物質のバランスを乱してしまう菌が存在します。これらの菌が作り出す物質には、ドーパミンの過剰分泌を引き起こすものがあります。日常的にドーパミン過剰の状態を作り出すことで、精神的に不安定になりやすい、幻聴や幻覚、過度のこだわり、感覚過敏などの原因になってしまうことがあるのです。

カンジダ菌

カンジダ菌は真菌(カビの仲間)の一種です。身近に存在する菌ですが、体内で増えると次のような様々な悪影響を及ぼします。

◆リーキーガット(腸漏れ)

カンジダ菌のようなカビの仲間は、腸の中で増えると菌糸を張って根付きます。そうすると腸壁が荒れてしまい、リーキーガット(腸漏れ)を引き起こします。荒れた腸からは、本来は吸収できない大きさの成分が通過してしまい、アレルギーや慢性的な炎症状態の原因となります。また、乳製品(乳ペプチド)や小麦製品(小麦ペプチド)による脳の混乱を引き起こす原因にもなります。

◆血糖値が不安定になる

カンジダ菌はアラビノースという物質を増やします。アラビノースは糖類に分類され、一部がブドウ糖に代わると考えられています。体内(血液中)のブドウ糖は血糖値とも呼ばれ、脳や身体の重要なエネルギー源となることから、ホルモンの働きによって厳密にコントロールされているものです。そのため、カンジダ菌の異常な増殖によってアラビノースが増えると、血糖値が不安定になり低血糖を招きやすく、脳や身体のエネルギー不足や感情のコントロールを不安定にさせる一因になってしまいます。

◆エネルギーが作りづらくなる

私たちが生きていくためのエネルギーの多くは、全身の細胞にあるミトコンドリアという器官で作られます。このミトコンドリアの中でエネルギーを作り出す仕組みに、TCAサイクル(クレブス回路)と呼ばれるものがあります。カンジダ菌などの真菌は、このTCAサイクルが働くのを邪魔する物質を作り出すため、エネルギーが作りづらい状況になり、身体的・精神的に不安定な状態を招いてしまいます。

当院では、血糖値を安定させることや、エネルギーを作りやすい身体作りを目指すことも、治療においてとても重要と考えています。これらについては、また別の動画でも詳しくお伝えしていきたいと思います。

このように、悪玉菌や真菌が増え、腸内環境が悪くなることは、発達障害の症状にも深く関わっているのです。こうして見ると、腸の中には怖い菌がいっぱいいるように感じてしまうかもしれません。でも、ご安心ください。私たちの腸の中には、ヒトにとって嬉しい働きをしてくれる菌もたくさんいるのです。

それが、善玉菌と呼ばれる菌です。それでは次は、善玉菌について見て行きましょう。

善玉菌はこんなにすごい!

善玉菌にはどのような菌があるのでしょうか?代表的な善玉菌としてあげられるのが、小腸に多い乳酸菌と大腸に多いビフィズス菌です。他にも、酪酸を作り出す酪酸菌という菌も近年注目されています。これらの菌は整腸作用や免疫機能を高めるなど、ヒトにとって有益な働きをしてくれることから、善玉菌と呼ばれています。善玉菌の腸内での働きは次のようなものがあります。

腸内細菌のバランスを維持、正常化します

乳酸菌などの善玉菌は、食中毒を起こす菌や病原菌の、活動や増殖を抑えます。

食物の消化、吸収、代謝を補助します

食物繊維やオリゴ糖を利用して、ヒトに有用な乳酸や酢酸・酪酸などの短鎖脂肪酸を作り出しています。また、ビタミン(B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸、B12、ビタミンK)を作ることや、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルの吸収、余分なミネラルの排泄にも役立っています。

腸内のアルカリ度、酸性度を一定に保ちます

乳酸や酢酸を産生し、腸内を酸性の環境にします。悪玉菌は酸性の環境に弱いものが多いので、増殖が抑制され、悪玉菌が増えにくい環境になります。また、乳酸や酢酸が腸を刺激することで蠕動運動を促し、便秘を防ぐことにも貢献します。

免疫系統を活性化させる働きがあります

体内の免疫システムに重要な白血球を活性化することで、身体を病気から守るために役立ちます。また、ウイルスの増殖を抑える働きのある、インターフェロンの産生能力を高めることにも貢献します。このように、腸だけではなく、身体全体の免疫作用にも関与して、私たちの健康を保ってくれています。

発がんの予防に効果があります

乳酸菌には腸内で悪玉菌が作り出した様々な発がん物質と結合し、体外への排出を助ける働きがあります。ビフィズス菌は、悪玉菌が作り出したニトロソアミンという発がん性のある物質を分解する働きも持っています。

酵素の産生に深く関与しています

腸内細菌の作り出す酵素は3,000種類以上で、体内で最も多くの酵素が働いている肝臓の酵素も、腸内細菌の働きによって活性化されます。脳や神経系に関与する酵素など、体内のあらゆる生命活動が腸内細菌の恩恵を受けています。

腸内環境が私たちの身体に与える影響がいかに大きいか、お分かりいただけたでしょうか。

マリヤ・クリニックでは、腸内環境を調べるために、OAT(有機酸検査)という検査を採用しています。この検査では、クロストリジウムやカンジダ菌などの悪玉菌・真菌の異常増殖によって、腸内環境の悪化がないかを調べます。そのほかに、体内の様々な有機酸という物質を測定することで、エネルギーを作るTCAサイクルが順調に回っているか、ドーパミンを含めた神経伝達物質のアンバランスがないか、エネルギー産生に重要なビタミンB群やビタミンCといったビタミンが足りているか・・・などについても調べることが出来ます。

では、腸内環境の悪化が考えられる場合には、どうしたら良いのでしょうか?

そこで次は、腸内環境を改善するための重要なポイントについてお伝えしていきます。

腸内環境を改善するために

◆善玉菌を増やす

正常な消化や、腸内細菌のバランス、免疫機能の維持などには善玉菌の存在が必要不可欠です。では、大切な善玉菌を増やすにはどうしたら良いのでしょうか?その大きなポイントとるのが、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を意識して摂ることです。それぞれについて詳しく見て行きましょう。

善玉菌を含むもの(プロバイオティクス)を摂る

善玉菌そのものを含むものを「プロバイオティクス」と呼びます。食べ物だと、ぬか漬け、納豆、キムチ、味噌、ヨーグルトなどの発酵食品が代表的なものです。また、善玉菌そのものを凝縮した整腸剤やサプリメントなどもプロバイオティクスにあたります。

善玉菌のエサとなるもの(プレバイオティクス)を摂る

善玉菌の栄養源となるものを「プレバイオティクス」と呼びます。プレバイオティクスは、ヒトは消化できないけれど善玉菌のエサとなってくれるもので、善玉菌を増やしたり活性化したりすることで身体に良い影響を与えます。代表的なのが、水溶性食物繊維やオリゴ糖です。水溶性食物繊維は、ゴボウ・オクラ・人参などの野菜類や昆布・わかめ・もずくなどの海藻類などに多く含まれます。ネバネバ・ヌルヌル・トロトロした食感のものに多い、と考えるとイメージしやすいかもしれません。オリゴ糖は、玉ねぎ・ごぼう・きなこ・大豆などに多く含まれます。

◆有害な菌を減らす

腸内に有害な細菌や真菌が明らかに多いと考えられる場合には、その絶対数を減らす除菌治療も有用です。自然界に存在する植物にも抗菌作用を持つものは多くあり、ハーブやニンニクなどはその代表的なものです。

◆食べたものをしっかり消化させる

体調・加齢・ストレスなどの影響で消化酵素の産生や分泌が低下すると、消化不良を起こしやすくなります。消化不良が続くと腸内は悪玉菌が優位な状態になりやすく、消化管の負担も増大します。

消化を良くするために、食べ方や調理方法を工夫することはとても大切です。

消化を良くするための食べ方

・ゆっくりよく噛んで食べる

・一度にたくさん食べ過ぎない

・規則正しく食べる

・食後に休憩をとる

・お腹を冷やさないようにする

・リラックスして楽しく食べる

消化を良くするための調理の工夫

・やわらかくなるまで煮る・蒸す・茹でる

・食材の繊維を断ち切るように切る

・余分な油脂は除く

・薄味を心がける

・消化酵素を含む食品を取り入れる(大根、キャベツ、長芋、玉ねぎ、パイナップル、キウイフルーツなど)

また、消化を助ける消化酵素を利用して、消化のサポートを行うことも有用です。

◆消化管の粘膜を整えて、バリア機能を強化する

腸を含めた消化管は、口から肛門まで繋がっている1本の管です。消化管の粘膜は、皮膚と同じように身体の外と接しており、身体の内側(血管内など)に悪いものが入らないようにするためのバリアとして、重要な機能を持っています。粘膜は常に外の有害な物質にさらされているため、その修復と再生が不可欠であり、そのサイクルは他の細胞と比べとても早いのです。例えば、皮膚の細胞の寿命が約30日、血液中の赤血球の細胞の寿命が約120日であるのに対し、小腸の上皮細胞の寿命はわずか数日です。この粘膜の正常な再生のためには、ビタミンAや亜鉛などの栄養素がとても大切です。

ビタミンAはレバーやウナギなどの動物性食品に多いですが、人参・かぼちゃ・ほうれん草のような緑黄色野菜にも多く含まれます。ビタミンAは脂溶性ビタミンといって油脂に溶けやすいビタミンのため、炒め物など油を使った料理に加えると吸収率が良くなります。また、亜鉛は牡蠣やレバー、牛肉などの動物性食品のほか、高野豆腐や納豆などの大豆製品、カシューナッツやアーモンドなどに多く含まれています。

腸内環境を改善するためには、最低でも数カ月間は必要です。腸内環境には個人差があり、除菌治療によって体調を崩してしまう場合もあるため、専門家の指導のもとで治療を行うことが大切です。


当院では、Bくんのようにほとんど発語がなかったお子さんが、腸内環境を整える治療を行ってから、言葉が出るようになり、ひどかった癇癪が穏やかに落ち着いてきたという例が複数あります。また、腸壁のバリア機能が改善することによって、グルテン・カゼインのペプチドや有害なものが脳に移行する可能性が低くなり、脳への悪影響を減らすことが期待できます。腸脳相関という言葉があるように、腸の改善・成長は確実に脳の成長に繋がるのです。

発達障害の分子整合栄養医学的治療は、最低でも2~3年はかかりますが、改善するほどに、子供は自立して手がかからなくなっていくでしょう。そのためには、治療の開始をなるべく早くすることが大切です。5歳頃までに目途をつけられると、生涯に亘ってその症状から解放されることが期待できます。ただでさえ、発達障害の小さな子供を育てるのは大変なことですが、成長が著しいこの時期に手を掛けることで、より成果が出るのです。しかし、半分くらいの人は、少し改善すると途中で治療を止めてしまいます。

また、大人になったら治療をしても全く意味が無い、ということはなく、大人の方でも症状の軽減が期待できます。

いかがでしたか。今回は腸内環境が発達障害の症状に与える影響についてのお話でした。他にも発達障害特有の症状を招く様々な要因がありますので、興味のある方は、ぜひ他の動画・投稿もご覧ください。 最後までご覧いただきありがとうございました。


Youtube動画リスト

【発達障害の症状改善】腸内環境編①

腸内環境改善の治療で発達障害の症状が改善!? ~ B君の事例とは!? ~

【発達障害の症状改善】腸内環境編②

~ 知れば知るほど為になる ~ 腸内環境を乱す悪玉菌/腸内環境の味方善玉菌

【発達障害の症状改善】腸内環境編③

腸内環境を改善するための善玉菌の増やし方 ・有害な菌の減らし方 ~ 消化不良を起こさない調理の工夫 ~

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